これって愛なのかな、とこそばゆくなる話
(ヨリ×マゴ) 治安が悪いとは聞いていた。といっても、昼間の明るい時間である上に周りには通行人がわんさかいる中で、まさしく白昼堂々とカツアゲされそうになるなんて思いもしなかったのだ。 借りたアパートから徒歩で5分ほどの場所にあるコンビニで買った、出来たてのホットスナックをかじりながら帰り道を歩いている最中、急に脇から腕を掴まれたかと思いきや、そのまま引きずられるように細い路地の中へ連れ込まれ、2人の若いボーイに囲まれ現在に至る。 「あ、あの……何か御用で?」 「なんだよ、言わなきゃ分かんねーの? おっさん」 「なんかでも外れっぽそー。見る目ねえなあ」 「うっせーよ。お前と違って、カネだけ野郎より使い道ありそうなヤツ選んでんだ」 まるで話を聞いていない2人の会話を聞くに、どう考えてもカツアゲしようとしているんだなあと悟る。背負っているショルダーバッグのベルトを胸元でぎゅっと握りしめながら、言い争っているうちにどうにか逃げ出せないかときょろきょろしていると、突然顔の脇に拳が飛んできて堪らずびくりと体を震わせてしまった。 「ほわあっ!」 「おら、出せよ」 「な、ななな、何をっ」 「しらばっくれてんじゃねーよ。有りガネ全部寄越せっつってんだ」 「き、君たちが満足しそうなほど持ってない、ですっ」 「へー……だってよ? どする?」 にやりと怪しい笑みを浮かべ、少し距離を置き見定めるように全身を眺める視線がどうも気持ちが悪い。そして、目の前に詰め寄ってきたもう1人のボーイが静かになったと思えば、前触れなく突然フクの裾を掴み、素肌に手のひらを滑らせるものだから思わず情けない声を上げてしまった。 「や、やだ! 何すんの!」 「カネが払えねえならカラダで払うしかねえだろ。いい商品になりそうだし」 「か、カラダ……!?」 「……その前に、味見くらいしてもいいよなあ」 搾取される。そう気付いた時にはもう遅かった。振り切ろうと体を拗じらすことも叶わず、掴まれた両腕を頭上で壁に押さえつけられ、彼の背後で高みの見物をしていたボーイが自ら陰茎を曝け出し始めたのでぎょっとしてしまう。 「最近ご無沙汰だからよー、俺先な」 「ざけんな。勝手なこと言ってんじゃねえ」 「いいからいいから。さっさとぶち込んで済ませっから、よ……ッ、何、だ!?」 いよいよ履いていたスパッツにも手を掛けられ、怖さで声も出なくなってきた。ひたすら息を整えて目を背けることくらいしか抵抗らしい抵抗は出来ず、とにかく早く解放されたい、そう思いぎゅっと目を閉じていると、その闇の中で知っている声が聞こえた気がした。それでも再び戻る勇気はなく、ただひたすら縮こまり嵐を過ぎ去るのを待つしかない、そう思っていたのに。 「マゴ」 手を、差し伸べられた気がした。 「この、バカたれ」 恐る恐る、その手に自身の手を重ねた。その瞬間、光が辺りに広がって、いつの間にか先程までいたはずの若者は苦しそうに地面の上でのたうち回り、自分はというとフクが乱れているのも構わず大好きなぬくもりが自身を力いっぱいに包み込まれていたのだった。 「ヨリ?」 「おう」 「……ほんとだ。ヨリだあ」 ずるずると、腰が抜けて壁を伝い地へ落ちそうになる。それを支えるように回された腕、そのまま体を横に抱えられて恥ずかしくて死にそうになった。でも、手間かけさせた罰だと言われたので、顔を胸元に押し付けたまま大人しく抱えられることにした。だって、見上げた先に浮かぶヨリの表情があまりにも眩しくて、今にも沸騰しそうなくらいに顔が熱くて堪らなかったから。 「……ありがと」 「どーいたしまして」 「えへへ」 平気そうな顔をしているくせに、どくんどくんと波打つ彼の心臓の音が頭の中に響く。それが嬉しくて堪らないけれど、意味を知っているからこそ言わない。でも、隠すことは難しくて、どうにか誤魔化そうと必死な自分はいつまでも滑稽なまま、ただひたすらにヨリの胸元でフクをぎゅっと握り締めることしか出来なかった。(2025.10.18)
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