きらい、と冷たいまなざしを向ける話

(ヨリ×マゴ)  信じられないといったような顔をしていた。はいはいと聞き流しそうになってふと言われ慣れない言葉だったことに気付き、四度ほど今何と言ったのかと聞き返された。心を鬼にして誤魔化すことなく、聞かれた分だけ全て同じ言葉を返している間普段は優しそうに垂れている灰色の瞳はずっとまんまるに見開かれていて、何度聞いても理解が出来ないといったような表情を浮かべていて流石に心が痛くなってきた次第である。 「……まあ、その、そっか。そうだよね、俺、だらしないし。素直じゃなければかわいくもないし。その、めんどくさいおじさんというか、正直近寄りたくないよねっていう気持ちは分かるよ。全然モテないのもそういうとこから来てるんだろうし? でも、そう思ってたならもっと早く言ってほしかったし、今更、言われても、もう……前みたいに一人で生きてくの、さすがにしんどいっていうか、っ……ぐすっ、ふへ、あはは。いい年したおじさんがこんなことで泣きべそかくとか、ほんとダサすぎっていうか。へへ……いや、その、気付かなくてごめんね。すっかり甘えてたみたいだ、こんなどうしようもないやつを一度でも好きになってくれて、っ、あり、がと…………う、わあっ!」  後悔すると思っていたけれど、予想していたとおりやっぱり後悔してしまって、下手くそな笑顔を作りながらぼろぼろと涙を零しているマゴを前にして堪らずその腕を引き寄せて、胸の中で力いっぱいにその体を抱き締めた。きっと普段から後ろ向きな考えているのだろうと分かる言葉の羅列に、冗談とはいえ、きらいという三文字が彼にとってどれだけ重く恐れていたものなのだろうと想像しては酷く罪悪感に苛まれていく。 「マゴ、すまん。俺が馬鹿だった、軽い気持ちで言っていいようなことじゃなかった」 「あっ……え、なに……」 「その……フレンドとバトルで負けちまった時に罰ゲームだっつわれて、恋人に、思ってもねえことを言えって言われて……」 「じゃ、俺、ヨリに嫌われちゃったとか、そんなんじゃないってこと……?」 「あ、当たり前だろそんなの!」 「そ、そっか……そう、かあ。へへ、良かった……」  酷いことを言ってしまった恋人を責めることなく、それどころか手で涙を拭いながら深く息を吐いて安心したように身を寄せるマゴがあまりに愛おしくて、もう二度と彼を傷付けるような嘘は絶対につくまいと心に決めた。 「もう、いっそのこと殴って。俺を」 「それは、ちょっと……じゃあ、代わりに……その。嘘じゃなくて、本当のこと。ちっちゃい声でいいから、言ってくれる?」  悪いのはこっちなのに、何故か申し訳なさそうに照れながら俯くマゴがどうにも可愛くて、耳元でそっと、大好きですと零しては額に口付けたのだった。

(2025.09.21)

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