事後に自分の好きな芸能人について話す話

(ヨリ×マゴ) 「俺、ホタルちゃんが一番好きだな」  乱れた呼吸がようやく落ち着いてきた頃、お互い何も着ないまま狭いベッドに二人で横になっている時に彼は突然ぽつりとそう呟いた。  彼が以前からインクリング界では老若男女問わずレジェンドと呼ばれる程に人気のあるアイドルユニット、シオカラーズの片方のファンであるのは知っている。と言っても、どちらかを選ぶのであれば、という程度のファンというだけで所謂ガチ勢と呼ばれるまでの執着はない。最近は彼女たちについで人気のあるテンタクルズという音楽ユニットにも興味があるようで、最近地下から突如として進出してきたというオクトリングという種族がメンバー内にいるらしい。 「急になんだよ」 「若い子にしては大人っぽいし、俺みたいなのを引っ張ってくれそうなしっかりもののお姉さん的要素もあるじゃない?」 「誰も聞いてねえけど」 「でもそんなしっかりものでも、アオリちゃんの前では甘えんぼになるのかなとかそういうギャップ? が好きかも。まあこれはただの想像なんだけど……」 「へいへい、それはようござんした」 「……お前は、子供の頃からずっと俺の手を引いてくれてたよね」  天井を見上げながら細々と話していたマゴがごろりと体を向けて、目を閉じうつらうつら眠気と戦っていた自分の手を取り指を絡めてくる。すっかり熱が引きほんのりと温かみを感じる細い指は相変わらず心許なかったけれど、向けられたとろりと蕩ける視線にどきりと胸が高鳴った。 「つっけんどんなくせに放っておけなくてさ、昔から世話焼きだった」 「誰のせいでそうなったと思ってんだよ」 「あはは、そうだね。いつまで経っても心配かけてばっかりだ」  どことなく頬が赤くなった彼が静かに瞼を落としていく。次第に寝息が聞こえ始めた頃、そっと頭の下へ腕を差し入れてそのまま身を寄せ合うと、自然に首元へと顔を埋めて思わず口角が上がった。 (離せっつわれても、もう二度と離すかよ)  このまま、ずっと一緒に過ごせるだけでいい。他に何もいらないから、この世界を誰にも壊されませんように。そう心の中で祈りながら、気持ち良さそうに眠る彼の額をそっと優しく撫でた。

(2025.06.01)

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