昇る日の煌めく話
(ヨリ×マゴ) 貴方はヨリマゴで『花言葉で愛を告ぐ』をお題にして140文字SSを書いてください。 https://shindanmaker.com/587150 「どうしたの、これ」 一人買い出しに行っている間に一体どういう風の吹き回しなのか、店に帰っては居間の襖を開けた瞬間に視界に広がった色鮮やかな黄色に思わず目を丸くした。テレビのリモコンくらいしか置かれていなかったはずのコタツ机の上に十数本はあるであろう向日葵の花束が花瓶に生けられており、まるで笑顔のように煌めくその明るさに自然と笑みを溢しそうになる。しばらくの間その太陽のような花を呆然と眺めていると、用を足していたらしい幼馴染が廊下の先から帰ってきて、なにやらにししと口角を上げてはこちらを眺めていた。 「なかなか綺麗だろ」 「うん。でも、なんでまた」 「なんでって、今日は誕生日だろ。俺らの」 照れ臭そうに目線を落としてそう呟く彼の言葉を聞いてようやく事の自体に納得した。誕生日というのは名ばかりで、自分を含め目の前にいる幼馴染、そして既にこの世を去っているもう一人の幼馴染は皆、物心が付く前に両親を失っている為に自身が生まれた日を誰も知らなかった。といえど分からないままでいてはプレゼントをもらえなくて勿体ない、などという子供らしい理由で幼い頃に三人で同じ日を誕生日にしようと決めた思い出があった。それを律儀にも覚えていた彼からのプレゼントがこの向日葵の花束だったようで、嬉しさと同時に全く準備をしていなかった自分が急に恥ずかしくなって慌ててごめんと一言謝ると、自分が勝手にした事だと苦笑する様子につられて笑みが漏れた。 「お前が花屋行ってそれ買ってるの想像したら、なんか笑っちゃうな」 「うるせえなぁ、別に初めての事でもねえぞ」 「……そっか、そうだったね」 二年前のあの日、十数年振りに再会を果たすまで、彼が毎年シノブの命日に墓の前へ向日葵の花束を供えていた事に気付いたのは彼女と死別して数年が経った頃だった。向日葵という花はバラバラになっていた三人を繋ぎ止めていた唯一でもあり、合言葉でもあった思い入れのあるもので間違いはない。といえど、誰かに花を贈られるのはしばらく振りだった為、どこか照れ臭さを感じながらも胸の奥がほっこりとしたぬくもりを帯びていた。 「でも、なんでひまわりだけにしたんだ? 他にも綺麗な花、たくさんあるじゃない」 「そりゃお前、そうしねえと意味が……あ、いや、じゃなくて! ほら、えっと、俺達にとっちゃ特別だしよ!」 「はぁ」 「ま、そういう事で……風呂洗ってくるわ! たまにゃゆっくりしてろ、いいな!」 「はい、どうも」 なにやら慌てた様子で踵を返し、まだまだ開店時間には早いにも関わらず風呂の掃除へと向かった幼馴染を見送っては再び飾られた花束を見下ろしてみる。すると、花の影に隠れていたタグを見つけて無意識のままにその裏を捲れば、そこに記された言葉の意味に堪らず頬を熱くさせてしまったのだった。 「……相変わらず、こっ恥ずかしい事するよなぁ、アイツ」 あなただけを見つめる。声に出して読み上げる事さえも躊躇してしまいそうなそんな文字の羅列を指先で撫で、今頃同じく顔を真っ赤にさせているかも知れない幼馴染を想像しては懐かしい笑顔を彷彿とさせる太陽にそっと口付けを落とした。(2019.03.11)
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