器用な不器用の話
(相方くん×おにいさん) あいおにへのお題は『いい加減思い知れば良いのに、』です。 #shindanmaker https://shindanmaker.com/392860 愛とか、友情とか。言葉だけの形に意味はないと思った。与えられる側が理解しそれをイコールとして結びつけるその瞬間まで、他の誰かが同一の感情であると決めつける権利は一つもない。つまり、知る、分かる、そのように感じ取るタイミングは人それぞれで、予測は出来ても自身の思っていた通りには上手く伝えられない事は、いくら付き合いが長いといえどよくある話である。 「……きゅ、急に、何だし」 言葉が足りない、ときつく言い聞かせられた事は今までもあった。特に実の姉からそうお叱りを受けた時は、アンタにだけは言われたくないと思わず余計な一言を零してしまい、何の躊躇いもなく普通にぶん殴られた。その教訓を生かし、以来は出来るだけ本人に自分の気持ちを理解してもらおうと努力してきたつもりだったけれど、如何せん慣れない事はするものではなく、幾度となく勘違いをされてきたというのが現状である(それどころか初対面の相手には話す前から怯えさせた時もあった。何もしてないのに)。 という訳で、せめて恋人である相方、ヒナタに対してだけでも思っている事はきちんと対面し、しっかりとした言葉と行動で示していければいいと心に決めていたところ、意外にもチャンスはすぐさま巡ってきてくれた。時刻は夜、チビッ子二人はとっくの昔に床へ就いており、あまり面白くないバラエティのテレビ番組を眺めながら、大人二人はソファーに並んで座り菓子を貪っている。そして、自然と重なる手と寄せ合う肩にぬくもりが生まれ、気が付けば彼の腰に腕を回し胸の中へと抱き寄せていたから我ながら驚きである。見下ろすとあまりの突然さに困惑するヒナタがいて、開いた口も塞がらないまま手に持っていたリモコンをがちゃりと床へ落としていた。 「なあ、サキってば。聞いてんのかー」 「……すまん」 「い、いや。別に、謝ってもらう程の事では……」 少し考えれば分かる事だったが、さすがに前触れのなさ過ぎた行動に一人心の中で反省をする。やはり思い付いたままに一直線上を走り抜けるだけでは相手の為にもよろしくない。相手の為にしたいと思っていたはずなのに、相手の事を考えずに自分勝手な行動で押し付けるのはあまりにもタブーだ。以上の反省点を踏まえ、もう一度、徐々に離れていく互いの距離を詰め、風呂から上がったばかりの石鹸の匂いを抱き締めるようにその体を腕の中へと閉じ込めた。まだ火照っているのか丁度いい体温に思わず顔を埋める。耳元でくすぐったいと抗議の声が聞こえるけれど、離れたくない一心で聞こえないふりをした。 「……いいだろ。今は、俺らしかいない」 「い、いい、けどっ。いや、でも……」 つやつやの額、頬、口へ触れるだけの口付け。耳元でそっと、彼の名前を零す。じんわりと赤みを増していく白い肌を他所に、ようやく喉につっかえたままだった言葉を消えてしまいそうなくらい小さな声で囁いた。 「もっと、オマエが欲しい」 「あ、う」 「……ヒナ」 「ぐっ、ううぅ」 いい加減思い知ればいい、どれだけ愛されているかという事を。そんな理不尽な思いだけは胸の奥に残したまま、愛される事にまだまだ慣れそうにもない相方に苦笑しつつ、そのまま畳みかけるように押し倒すと噛み付くように口付けた。(2021.07.08)
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