甘え下手な話
(相方くん×おにいさん) 今日のあいおにのお題は【愛した僕の負け】です。 https://odaibako.net/gacha/102 暗闇の中にただ一つ灯るのは内容もよく分からない映像を流したテレビだけだった。相方が見てみたいとレンタルしてきた映画のDVD、彼自身もいまいちピンと来なかったのか、暇そうにお徳用ポップコーンを頬張りながらソファーに横になっている。 日付が変わって時計の針が丑三つ時を回った今、普段であれば眠気に負けている頃だったが、寝る前になってこの映画を見たいと言い出した彼に付き合って現在に至る。チビッ子達はとうの昔にもう床に就いていて、流すように見ていた自分が注いできたお茶もついに底をつき、特にする事も思い付かず暇を持て余しては手元にある携帯電話を弄っていた。 お互いに見ていないのであれば大人しく寝ればいいのに、とは思う。しかし、そんな状況を察してくれない相方が自身の太腿に頭を乗せ、面白くもないその映画を静かに眺めているものだから新しくお茶を汲みに行く事さえ出来ない。さり気なく、眠くないのか、また明日にしないかとか、遠回しに眠気をアピールするも生返事ばかりでついにはテレビ画面にエンドロールが颯爽と流れ始めてしまった。 「……よし、寝るぞ」 「これ食い終わってからでいい?」 「だったら先に部屋行ってる」 「まぁまぁ。あれ、終わるまででいいからさ」 先程からこの調子でのらりくらりとかわされるものだから腑に落ちない。すると、DVDについていたらしい特典映像が始まり、しかしそれには興味がないのか、空っぽになった袋を丸めてゴミ箱へと放り投げた相方は、人の太腿の上でごろりと寝返りを打ち、さぞ満足そうに満たされた腹を撫でながらにこりと笑っていた。 「オマエな」 「えへへ。……あれ、終わるまででいいから」 出演している俳優達の裏方トークが終わり、未公開シーンやNG集の映像が流れ始めている。けれども視線は互いの瞳に囚われたままで画面を見ていないどころか、スピーカーから溢れる声一つさえ聞こうともしていない。細く蕩けさせた海色に映る眠そうな自身の顔が尚更笑いを誘って、釣られて声を上げると不意に乗せられた体重が軽く、そして柔らかな何かが唇に重なって海風のような塩気の帯びた匂いが鼻を掠めた。 「……よし、寝る!」 「こっちの目を覚ませといてよく言う」 「えと……遅くまで付き合ってくれたお礼、でした」 「あまりにも残酷すぎる」 「あはは! まぁ、そう言うなって」 正直、半分目を閉じかけていたところでこの仕打ちはない。酷すぎる、すっかり意識も覚醒してしまった。そんな事は露知らず、呑気な相方はすっかり寝に入る様子で今から収めてくれそうな様子などはなく。ソファーから腰を下ろし、颯爽と洗面所へと向かった彼の背中を見送って、ただ一人残された自分はやれやれと肩を落としたのだった。 「……あばたもえくぼ、か」(2020.07.28)
home